NPO法人 ホスピスのこころ研究所

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前野宏のMind and Heart 第4回

「村上明子さんのインタビュー-その3-『そしてザンビアへ』」

 

村上明子さんが今年の6月でピアノタイムを終了したのは彼女が今年の秋頃、海外青年協力隊(JAICA)としてアフリカのザンビアに派遣されることが決まっているからです。私(前野)はそのお話を聞いてとても驚きました。あまりにも突然なことでしたし、村上さんとザンビアがあまりにもかけ離れていたからです。恐らく、彼女からこのお話を聞いた方は皆さん同じように感じたことと思います。今回は彼女のザンビア行きについて伺いました。私はこのお話が「ホスピスのこころ」に通じると思い、とても興味深く伺いました。

 

前野:それではザンビア行きについて伺いたいと思います。今、村上さんはどういう気持ちでザンビアに行こうとされているのでしょうか。

 

村上:毎日その時々で沸いてくる気持ちが変わります。たくさんの期待と少しの不安です。やってみたいこと、チャレンジしてみたいことがある一方で、語学や慣習の違いの心配から、自分が思っていることができるのか、そもそも相手から求められていなくて、冷たい対応などをされたらどうしようかなど考えています。

 

前野:どうしてザンビアなのですか?

 

村上:昔から途上国に関心があったのですが、高校生の時に南アフリカのアパルトヘイトを題材にした活動をすることがあり、それがきっかけで特にアフリカに興味を持つようになりました。音楽の位置づけは人によって様々で、その音楽が途上国にどのように役立つのか、助けになるのかがしばらく見えてこなかったのですが、いろいろな活動の中でも、特にアンサンブルグループ奏楽で幅広い活動の場を与えていただいたことで、音楽でも何かできることがあるかもしれないと思いました。音楽をコミュニケーションツールのひとつとして人と関わることができれば、そこからその人にとって必要なことが何かわかるのではないかと思ったのです。きっかけはいくつもあるのですが、コロナを経験したり、ウクライナ侵攻があったことで思うこともありましたし、応募に年齢制限もあったので、タイミングとしては今かなとエントリーすることにしました。私は海外で生活したこともないですし、アフリカに行ったこともありません。なので体制が整っているJICAを通して行くのが良いかなと思いました。

 

前野:ザンビアというのはJICAの方と相談した中で出てきたのですか?

 

村上:アフリカ、音楽、資格条件、語学レベルで当てはまったのがザンビアでした。

 

前野:やはり、あちらでもピアノはされるのですね。

 

村上:したいですね。ピアノタイムをやってきて、皆さんの反応などを見てきているので、活動外にそういったこともチャレンジしてみたいと思います。

 

前野:具体的にはどのような活動をなさるのですか。

 

村上:あちらの大学に配属されて、そこの学生さんにピアノを教えたり、その向上のためのワークショップや勉強会、コンサートなどの活動があります。後は自分の仕事が終わって自由な時間があれば、その時間でやりたいと思っている活動ができればと思っています。子供達と関わることができればやってみたいですし、病院や施設にも行ってみたいです。これまでしていた音楽をそういう所に持って行ったらどうなるのかなということが気になります。

 

前野:そうすると、当院でのピアノタイムの経験が生かされそうですね。

 

村上:そうですね。こんなにも受け入れられるんだなと正直驚きました。みんながみんな音楽を好きなわけではないでしょうし、本当に具合の悪い時には放っておいてほしいという方もいると思いますが、音楽によってこんなに元気になったり喜んでくれる人がいるんだということを経験し、とても嬉しかったですし、音楽の力を感じました。そしてそれはやはり生(演奏)の力なのだとも思いました。

 

前野:職員とも話しているのですが、2年間経って必ず帰ってきて頂いて、帰朝報告会をして頂きたいです。村上さんがどのようなことを経験してきて、学んでこられたかを教えてほしいですね。

 

村上:そのようなお話しができるくらい頑張りたいです。そうですね。そういった緊張感もありますね。旅行に行くのと違って、この派遣には責任を感じてます。

 

前野:職員と話していても、皆「すごいよね。」と言っています。そもそも、ザンビア知らないです。(笑い)私もそうですが、日本人にとってアフリカってかなり遠いです。映画か何かの世界ですね。あるスタッフは「アフリカというと怖い」と言っていました。村上さんがそのようなところに行くのは偉いねという気持ちだと思います。分からない世界に行くというのはチャレンジですよね。

 

村上:ちょっと分からないくらいだから行けるのかなと思います。ふと我に返ると怖くなって、考えすぎたら躊躇してしまうから、ちょっと分からないくらいが良い思っています。

 

前野:最後になりますが、村上さんにとって「ホスピスのこころ」とはどういうことでしょうか。

 

村上:人間力ではないでしょうか。自分そのものを差し出すという。

 

前野:私は村上さんが今回、ザンビアに行かれることは「ホスピスのこころ」そのものだと思っています。「ホスピスのこころ」は弱い方の目線に立つことです。それは、その人の考え方に沿うとかその人に受け入れられる行動をするという積極的な行動だと思います。ザンビアのことに興味を持って支援する方法はいろいろあると思います。寄附をするとか。でも、村上さんがわざわざ現地に行って、活動するということはまさに自分を提供することですね。

 

村上:そうですね。募金をするくらいなら貯めてでも良いから自分が行きたいと思っていました。自分を提供したい。自分が試されていると思います。自分がどういう者であるかあからさまになると思います。

 

前野:ザンビアに2年間行かれた明子さんはきっと成長して帰ってこられることと思います。みんなそのことを楽しみにして待っています。少し寂しいですが、2年後にはまたお会いできることを楽しみに、送り出したいと思います。どうかお元気で。心からご活躍をお祈りしております。